テレビタレントとしての顔が有名だが、桂歌丸の本質はどこまでも「古典落語の探求者」だった。特に三遊亭圓朝作の長編長尺ネタ『怪談牡丹燈籠』の通し口演には、晩年まで並々ならぬ執念を燃やしていた。長時間の口演は健常者であっても体力を激しく消耗する作業である。
体調が限界に達し、体重が36キロまで減量した時期でさえ、彼は文庫本を手にセリフの推敲を怠らなかった。息が続かなくなると口演のテンポや間(ま)を微調整し、病の身体だからこそ醸し出せる幽玄な味わいを表現に変えた。病魔に侵されながらも新しい表現を模索し続けた姿勢こそ、彼が真の芸術家と称される理由である。