毒舌のイメージばかりが先行しがちだが、松任谷由実の性格を理解するうえで欠かせないのが、音楽に対する真摯な態度だ。50年以上にわたって第一線を走り続けてきた背景には、圧倒的な自己管理とプロ意識がある。
自身のソングライティングについて「昔から私のソングライティングのスタイルはメロディ先行型」と語り、夫でありプロデューサーの松任谷正隆と常に最新の音楽を取り入れながら制作を続けてきた。流行を追うのではなく、自分の感性で時代を先取りする。その姿勢は、デビューから現在に至るまで一貫している。
2020年に発売されたオリジナルアルバム「深海の街」は、コロナ禍に「シンガーソングライターとしてこの時代を作品として記したい」という意欲のもと制作された。世間が混乱の渦中にある時でさえ、創作の炎を絶やさない。それが松任谷由実というアーティストの本質的な性格だ。どんな状況でも「記録者」であり続けようとする意志は、並の精神力ではない。
作詞家の秋元康は対談の中で「ユーミンは天才だ。作詞家の僕が痺れた歌詞」と評している。業界のトップを知る人物に、そこまで言わせるだけの実力と個性。その才能の裏には、誰も見ていないところでの膨大な努力と、感性を磨き続けてきた長年の習慣がある。