「日常の不摂生や過度なストレスが引き金になる」というイメージは根強いものの、疫学調査が示す科学的根拠はまったく異なる構図を示しています。国立がん研究センターが継続して報告している人口寄与危険割合(PAF:その要因を完全になくした場合に予防できるがんの割合)の解析により、予防可能な癌のリスク要因第1位として浮き彫りになったのは、意外にも細菌やウイルスによる「持続感染」でした。
日本人全体の発症割合を俯瞰すると、感染性病原体に起因するがんは全体の約16〜20%を占めています。具体的には、胃がんの主因となるヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)、子宮頸がんを引き起こすヒトパピローマウイルス(HPV)、そして肝臓がんの温床となるB型・C型肝炎ウイルスがその代表格です。日常の食事や運動不足といった生活習慣以上に、体内に潜む微小な病原体が長期間にわたって慢性炎症を引き起こし、DNAの変異を蓄積させている事実を重く受け止めなければなりません。
ただし、男女別にデータを精査するともう一つの厳然たる事実が浮かび上がります。男性単独の集計においては、今なお「喫煙」が発症原因の第1位(寄与度約23.6%、死亡寄与度約34.4%)に君臨しています。女性では喫煙による寄与が約4〜5%にとどまるのに対し、感染症が約15〜17%と突出して1位を記録。全体を総括すれば「感染症」と「喫煙」の2大要因が、日本人の発症リスクの二大巨頭として君臨し続けています。