本作の原点には、小説家・野坂昭如が新潮社から発表した同名の直木賞受賞小説が存在する。野坂自身、戦時下に妹を餓死させてしまったという強烈な罪悪感と痛恨の念を抱えており、自伝的要素を孕んだ物語として執筆された。しかし、それをスタジオジブリで劇場アニメ化するにあたり、高畑勲監督は作品に全く異なる現代的な視座を導入した。
高畑監督は生前のインタビューや解説において、清太の姿は決して過去の歴史の遺物ではなく、「不快な人間関係を嫌い、自分の好きな世界だけに閉じこもろうとする現代の若者そのもの」であると繰り返し指摘していた。戦争という過酷な極限状態が、現代人の持つ人間関係の脆さや孤独への傾倒を露わにしたのである。反戦というストレートな題材を超えて、社会と断絶した個人の危うさを描いたからこそ、本作は普遍的な戦争ドラマとして世界的なアニメーション史に金字塔を打ち立てた。