本書の失敗パターンで最も多いのが、「問題を軽く考えて読んだ後、解答解説を赤ペンで写して終わり」というインプット中心の使い方である。『得点奪取現代文』に限らず、記述系の参考書で点数が伸びない受験生の学習履歴を調べると、ほぼ例外なく「解答を書く前に解説を読む」「答え合わせを他人任せにする」という悪癖が見つかる。
現代文の記述問題で得点を伸ばすためには、採点者が何を見ているのかを理解する必要がある。河合塾の採点基準は、おおむね「中心要素」「構成要素」「表現の適切さ」の3軸で整理されている。本書の解答には採点のポイントが明示されているため、これを単なる「模範解答」として暗記するのではなく、自分の答案に何が不足していたのかを要素単位で照合する作業が不可欠だ。
具体的な手順として有効なのは、以下の3ステップである。第一に、制限時間を設けて実際に答案を書き切る。第二に、要素別の採点表を作り、自分の答案に「含まれている要素」と「欠落している要素」を仕分ける。第三に、欠落要素がなぜ拾えなかったのかを本文の該当箇所に立ち返って確認する。このプロセスを1題につき最低30分かけることで、記述力は目に見えて変わる。逆に、ここを怠って問題数をこなすだけでは、本書が持つ「解答作成プロセスの質」という最大の価値を捨てていることになる。