かつて熱帯雨林において行われていたカニバリズムは、映画『食人族』のように「人間を獲物として狩り、空腹を満たす」行為では決してありませんでした。文化人類学において、食人は明確に2つの類型に分類されます。
身内の死者を弔うために食べる内因性カニバリズム(エンド・カニバリズム)と、敵対部族の戦士を侮辱・無力化するために食べる外因性カニバリズム(エグゾ・カニバリズム)です。パプアニューギニア周辺で記録された儀式の真相は、彼らの厳格な宇宙観と法秩序に根ざしていました。
コロワイ族の社会において、不可解な急死や感染症による死は「自然現象」としては認識されませんでした。彼らの世界観では、夜な夜な人の体内に忍び込み、内臓を食い破る悪霊「カクア(Khakhua)」の仕業だと信じられていたのです。死に瀕した人間がうわ言で誰かの名を呟けば、その人物が悪霊カクアに乗っ取られた犯人として告発されます。
告発された者は部族の掟に基づき、裁判的な儀礼を経て処刑されました。そして、「肉体を食い尽くすことによってのみ、悪霊を完全に滅ぼすことができる」という絶対的な論理のもとで消費されたのです。つまり、彼らにとってそれは猟奇的な殺人ではなく、共同体を悪霊の脅威から守るための正当防衛であり、厳格な「社会防衛システム」でした。