ふたりの出会いは、落合博満氏がロッテオリオンズに入団して間もない1980年頃に遡ります。当時の博満氏は、社会人野球の東芝府中で実績を残してプロ入りしたものの、プロ野球の理不尽な上下関係や練習方針に反発し、夜な夜な酒やパチンコに興じる自堕落な生活を送っていました。才能がありながらもくすぶっていた20代後半の青年・博満氏の前に現れたのが、長野県飯田市出身で、若くして東京で飲食店などを手掛けていた自立した大人の女性・岡田信子さんでした。
知人の紹介を通じて知り合った当初、信子夫人は野球にまったく興味がありませんでした。しかし、博満氏の類いまれな打撃センスと純粋な人柄にいち早く気づき、「この男を球界一の打者にしてみせる」と直感します。信子夫人は、覇気のない博満氏に対して「あなた本当にプロ野球選手なの?」「三冠王くらい獲ってみせなさいよ!」と痛烈なゲキを飛ばし続けました。年上ならではの包容力と厳しさで博満氏の怠惰な生活を一変させ、ふたりは同棲を経て1984年に正式に入籍。この出会いこそが、日本球界の歴史を塗り替える天才バッターの覚醒の引き金となったのです。