地図記号の「田」は、上空から見た水田の景観を極限まで単純化したものだ。水田は一般的に、あぜ道(畦畔)によって格子状に区切られている。その区画を真上から見下ろすと、まさに漢字の「田」の形に見える。日本の水田景観が長い歴史のなかで培ってきたこの幾何学的な区画整理こそ、記号の直接的な由来とされている。
国土地理院の前身である陸地測量部の時代から、日本の地図は「現地で誰が見ても分かりやすいこと」を重視してきた。水田を表すのに田の字形を採用したのは、識字率の高さだけでなく、漢字文化圏である日本ならではの視覚的な合理性があったからだ。仮に「米」や「稲」の絵を描くよりも、格子状の「田」のほうが圧倒的に省スペースで、しかも直感的に水田と認識できる。この判断は、現在もなお地形図の図式として受け継がれている。