「万」を深く理解する上で避けて通れないのが、部首の分類と歴史的な字源の変遷です。漢和辞典を引いた際、多くの人が「部首が見つけられない」という壁にぶつかります。
部首は「方」でも「力」でもなく「一部(いちぶ)」
漢字「万」の部首は、1画目の横棒そのものである「一部(いち・いちぶ)」です。下部のパーツに引きずられて「力部」や「方部」を探しても見つかりません。文字の冠となる最初の横画が、分類上の基準となっています。
旧字体「萬」との関係性と筆順の継承
現在日常的に使われている「万」は、もともと古代中国の甲骨文字・金文に存在した「サソリ」の象形文字である旧字体「萬」の略字として普及した歴史を持ちます。「萬」は12画あり、筆順は「くさかんむり(3画または4画)」から始まります。
戦後の国語改革に伴い、1946年の「当用漢字表」、そして現在の「常用漢字表」へと受け継がれる過程で、画数が少なく筆記しやすい「万」が正字として採用されました。旧字体の「萬」から簡略化される際にも、文字の骨組みを安定させるために「上部の横」→「中心を支える折れ」→「外へ抜ける払い」という力学的な筆順規則が維持されたのです。