華やかに見える大名行列ですが、その裏で動いていた金銭の規模は桁外れでした。参勤交代に要する旅費は、藩の年間予算の約2割から3割を占めることも珍しくなく、現在の貨幣価値に換算すると1回の往復で数億円から数十億円に跳ね上がりました。
例えば、加賀百万石で知られる前田家の場合、行列の人数は2,000人から4,000人規模に達し、道中の宿泊費や人足への賃金、飲食費だけで莫大な出費となりました。薩摩藩島津家のように九州から江戸を目指す遠隔地の藩では、海路と陸路を組み合わせた数ヶ月がかりの移動となり、財政への打撃は計り知れません。
かつては「幕府が大名の謀反を防ぐため、わざと財政を消耗させる目的で参勤交代を強いた」という説が通説でした。しかし、近年の歴史研究では、幕府の統制だけでなく「他藩に見劣りしたくない」という大名側のプライドや体裁が、行列を自ら肥大化させ、出費を膨らませていた実態も明らかになっています。